研究概要 |
本年度は,下記の4遺跡において各種の探査実験と発掘調査とを行ない,以下のような成果をあげた。 1.石川県珠洲市寺家黒畑窯(広域流通窯,12世紀末〜13世紀初):全磁力,フラックスゲート磁気の両探査から,2地区で,磁気異常地域がそれぞれ2地域で認められた。発掘された窯跡は磁気異常から推定される位置と一致し,加熱を被った遺構における磁気探査の有効性が検証できた。二極法電気探査では,顕著な異常地域は認められなかった。なおその窯業技術が,兵庫県の神出・魚住窯(同時代の中世須恵器窯)に近いことが判明したため,その技術的な特色を熱履歴・岩石地磁気分析等を通じて解析中である。 2.富山県立山町室堂(山岳宗教遺跡の建物,中世〜近代):電気探査によって,道(土間)の部分が高比抵抗の領域とした現れ,高床住居の床下部分と道(土間)の部分を識別することができた。これは,踏み締めの強弱の差が土壌の電気比抵抗に反映したと考えられる。また磁気探査により,基檀を拡張した帯状の部分が磁気が弱い領域として検出できた。これは使用した土壌の違いによるものであった。このように探査によって,建物の床下部分と土間・道とを識別できたり基壇土壌の性質を判定できることが判ったことは,画期的な成果である。 3.縄紋土器の焼成実験地域(富山大学構内):縄紋土器の焼成を行ない,その焼成中の温度や熱の及び方,また焼成後に磁気と電磁気とを測定する実験を行なった。プロトン全磁気探査(センサー高45cm)では,焼成前後で顕著な変化は得られなかったが,帯磁率とフラックスゲート磁気探査及び電磁探査では変化が捉えられた。
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