研究概要 |
昨年度までに明らかにしたLicl,LiBrそしてLiSCNの濃厚水溶液(LiclとLiSCNについては8〜14mol/Kg,LiBrについては8〜10mol/Kg)にみられる性質ーこれらの水溶液を100Kまでゆっくり冷却しても,100Kから加熱しても,もうすでに過飽和溶液になっているはずなのに,結晶析出や含氷晶形成を示さないーに注目し,これらの水溶液について室温と80Kの温度領域におけるNMR測定から分子運動の研究を行った。この測定に先立ち試料温度の制御装置の製作を行った。この装置は,設定温度の±0,05K以内に温度制御を行うことができた。 特に分年度は ^7Li-NMRの緩和機構を明らかにすること,低温度までの拡散係数の測定の力を入れた。このためにLi^+イオンに水分子が4個配位した13.8mol/Kg,Licl/H_2Oと12.3mol/Kg,Licl/D_2O試料についてのNMR測定をし, ^7Li核のNMR緩和機構が,核の四重極子相互作用によるものであることを明らかにした。この緩和の式は 【numerical formula】 で与えられ,式と測定値よりLi^+水和体の運動の相関時間を求めた。さらに,NMR装置のパルスプログラマーによって制御できるパルス磁場勾配発生装置を製作し,13.8mol/Kg,Licl/H_2Oと12.3mol/D_2OのLi^+イオンとH_2O分子の拡散係数の温度依存性を測定し,室温付近で個々に運動してしたLi^+イオンとH_2O分子が,220K以下の温度では結合して同一の運動することを確認した。
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