研究概要 |
非電解質水溶液における超音波の伝搬特性と分子構造の関連を調べる目的で研究が進められた。特にアルコール水溶液の超音波緩和特性に注目し,アルコール分子構造との関連を調べることが目的である。これまで得てきている情報と比較するために3-プロポキシ1-プロパノールを合成し,その水溶液の超音波吸収および速度の測定を行なった。その結果2つの緩和現象を見出した。50MHz以上に観測される緩和は溶質溶媒間相互作用に基づく化学平衡のかく乱によるものであり,10MHz付近に見られるそれは疎水性相互作用が原因となっていることを緩和周波数,過剰吸収の濃度依存性より明らかにした。またそれらの速度論的熱力学的パラメータの決定も行なった。それらの結果は3-プロポキシ1-プロパノールが水構造を安定化させることを示した。一方超音波速度は濃度の関数としてプロットすると極大値をとる。これは断熱圧縮率が極小度の関数としてプロットすると極大値をとる。これは断熱圧縮率が極小値をとることになる。圧縮率が極小となる濃度はアルコールの疎水性に依存して変化する。この濃度に対して吸収結果から得られる水の水素結合していない割合を示す量をプロットすると異性体アルコール水溶液について線型関係が成立することが明らかになった。このことは非電解質の疎水性の度合を見積もる有効な手段である。水について水素結合した分子としていない分子の存在割合が決定されるのでそれらの間の自由エネルギー差が計算される。メトキシ基を含むアルコールと含まないアルコール,エトキン基,プロポキシ基を含むもの,含まないものについての自由エネルギー差を算出し,これらのグループによるエネルギー変化を決定した。その結果メトキシ基は水構造を崩壊する作用があり、エトキシ基は構造変化をほとんどおこさず,プロポキシ基は水の水素結合を発達させる能力があることが判明した。またエーテル酸素の分子中の位置もアルコール分子の疎水性と関連することが明らかになった。
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