研究概要 |
研究目的としてとりあげた3つの課題に対応して,本年度得られた成果を以下に要約する。 1.力学的な観測に関しては,調整をすませた超伝導重力計が,第34次南極観測隊よって南極の昭和基地に搬入され,重力の精密観測が始まった。一方,昭和基地に既に設置されたラコステ重力計による観測で,半日周期のδフアクターが,理論的な予測より10%も大きいことが分った。また,国内におかれた超伝導重力計により,気圧荷重に伴う重力変化が検出され,長周期潮汐の解析が行われた。 2.ホットスポット火山物質に関しては,物質科学的なデータの蓄積と分析が進んだ。先ず,フレンチポリネシア,ハワイ,ケニア,ニュージーランド,カムチャッカ地域の玄武岩について,高精度全岩科学分析が行われた。その結果,核・マントル境界付近から上昇してきた火山物質と,上部マントルに起源をもつ火山物質の間で化組組成に系統的な差があることが判明し,マントル内の流れと火山活動の関係が明らかになってきた。また,希ガス同位体比の分析から,ホットスポットの起源物質がマントル深部からきていることが確認された。 3.理論およびデータ解析に関しては,海底地形のデータ解析が進み,いくつかのホットスポットについて地殻物質の噴出の推移が詳細に把握された。また,核・マントル境界から生ずる上昇流が板状から管状に進化するというモデルが更に検討され,白亜紀のスーパープリューム,洪水玄武岩,大陸分裂,ホットスポットを含む進化の過程が地球の発達史の中で位置づけられた。
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