本研究の目的は長周期実体波(P波、SV波、SH液およびの反射波)の波形インバージョンによる解析に基づく地球内部の3次元構造の推定である。波形インバージョンを行うには理論波形と内部構造モデルパラメタに対するその偏微分係数を計算する必要がある。本年度の研究では我々は球対称モデルに対して必要な計算を行うソフトウェアを開発した。理論波形の計算には我々が開発したDirect Solution Method(DSM法)を用いた。我々の計算法では、P波、PcP波などといった特定の実体波フェイズを計算するのではなく、全てのフェイズを同時に計算できるので長周期実体波を含む時系列データの解析に有効である。理論波形を計算するソフトウェアと1次Born近以を用いて理論波形のモデルパラメタに対する偏微分係数を計算するソフトウェアを開発した。我々はこの成果を日本地震学会1992年度秋季大会およびアメリカ地球物理学連合1992年度秋季大会で発表した。 実際に大量のデータを使った解析を行うには、上記のソフトウェアの計算効率を改善する必要がある。そこで我々は本年度の研究では以下の改善を行った。(1)密度を離散化する際にlumped mass行列とconsistent mass行列を併用することによって計算精度及び計算効率の向上を実現した。(2)DSM法を波形インバージョンに必要な理論波形とその偏微分係数を効率よく計算できる手法であるが、本年度の研究で我々は計算時間をさらに飛躍的に短縮できる新しいアルゴリズムを開発した。我々はこの成果を日本地震学会1992年度秋季大会および1993年度春期大会で発表した(1993年度の大会については発表予定)。
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