1.東北地方の蔵王火山と相馬市付近にて、それぞれ第四紀の火山岩と白亜紀の石灰岩の試料採集のための調査旅行を実施した。前者は以前に行なった古地磁気学研究のうち松山逆磁極期中の正磁極期への逆転途中の地球磁場の詳しい様子を探るためであり、後者は白亜紀の時代における地磁気の変動を調ベるためだある。 2.採集した岩石試料については超伝導磁力計やスピナー磁力計を使用しての古地磁気方向の測行を行なった。また交流消磁法により十分に初生磁化成分が求められないものは、昨年度完成した高温連続測定装置を使用して高温で連続した熱消磁を行なった。その結果蔵王の火山岩からはハラミヨ期に関わる磁場逆転の詳細が解明された。また相馬層の石灰岩からは、古地磁気変動は白亜紀ではブリュンヌ期よりも小さいことや、この石灰岩は現在と同じ緯度で生成されたものであり、外来の地穀ブロックではないことも確認できた。 3.上記の調査や実験と平行して古地球磁強度のデータベースを作成した。熱残留磁化起源の火山岩から得られた3万前よりも古い時代の出版されたすベてのデータをインプットした。データベースの項目は単に年代と古地球磁場強度のみではなく、サイトID、年代決定法の種類、データの誤差、実験試料の数、古地磁気方向のデータ等、データの信頼性を評価するのに役立つ項目も導入した。このデータベースから必要に応じてデータを抽出し、種々の解析を行なった。重要な成果としては、中生代には地磁気ダイナモの長周期変化が存在したこと、地磁気双極子モーメントはガウス分布ではなく対数正規分布であること、等が判明した。 4.先カンブリア時代の古地球磁場強度が非常に不足していることが明らかになったので、今後は高温連続測定による古地球磁場強度実験を意欲的に行ない、全地球史ぶの地磁気変動の解明に発展させる。
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