研究概要 |
有機スズ化合物は,安定な炭素一スズ結合のおかげで,通常の有機金属より取り扱いが容易で,複雑な有機構造の中にも組み込んでいける利便さがある。しかし,ラジカル,遷移金属触媒,ルイス酸等での活性化により高い反応性を示すため,有機合成上有用に用いることができる。今回は反応の中間体で生じると考えられる異常原子価状態の有機アリスズがどのような反応性の特徴を示すかを,6員環環状エーテル合成と,その際の立体化学制御を観察する事で調べた。さらに周辺の異なる金属種であるケイ素,ゲルマニウムなどとの比較を行い,この反応を有用な生理性天然物合成への応用性について最適化の検討を行った。反応する相手の分子内のアセタールを,2,4-ジメチルプロパン-1,5-ジオールを用いてC2対称性なキラル構造を導入し,その立体化学,及び分子内にある別の不斉炭素からの立体化学をどう反映するか調べた。その結果有機スズ化合物では,2,4-ジメチルプロパン-1,5-ジオールの不斉炭素からの不斉誘起が起こり,その高い求核性が観察できたのに対し,有機ゲルマニウム,有機ケイ素誘導体では,SP2型のカルボニウム,あるいはオキソニウムイオンが生成してから,炭素一炭素結合生成を起こした結果を示すデータが得られ,各金属種により大きく結果が異なるを見いだした。 またこの結果を基盤に,7員環の合成も試み,高収率,高選択的な結果を得ることができた。これにより,4つに縮環した環状エーテルの合成を行い,6-7-7-6員環型ポリエーテルの高立体選択的合成に成功した。
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