研究概要 |
1.オクタシラキュバン固有の分子構造と電子的性質を知る目的のもとに、ペアルキル誘導体として、オクタキス(1,1,2-トリメチルプロピル)オクタシラキュバ(1)を創製した。X線結晶構造解析により、1,1,2-トリメチルプロピル基の大きな立体効果を反映して、このものの骨格はやや歪んだ立方体構造をとっていることが判明した。化合物1はつぎのような異常な性質を有する。(1)紫外・可視スペクトルにおいて、500nm付近に最長波長吸収極大が現れる。これは、先に合成したペルシリル誘導体が吸収極大を示さない事実と著しく異なる。(2)酸化電位は _+0.42Vであり、この値はこれまでに報告されたシクロポリシラン類の値にくらべ著しく低い。なお、1の関連化合物して、オクタキス(1,1,2-トリメチルプロピル)オクタゲルマキュバン(2)を創製し構造を確定した。紫外・可視スペクトルにおいて、2は可視領域まで吸収を示すものの明確な吸収極大を示さない。この事実は2の電子遷移がケイ素類縁体1のそれとは著しく異なることを示唆する。 2.ラダーポリシランとして、テトラデカイソプロピルテトラシクロ[4.2.0.0^<2,5>.0^<2,7>]デカシランの創製と構造決定を行なった。また、関連化合物して、ジベンゾ[c,h]-1,6-ジイソプロピル-1,6-ジシラビシクロ[4.4.0]デカ-3,8-ジエン(シス体)(3)を合成した。3では、σ(Si-C)軌道とπ(C=C)軌道との間の強い相互作用により、電子受容体であるテトラシアノエチレンとの組み合せにおいて強い電荷移動相互作用が発現した。 3.オクタシラキュバンの発光特性は多結晶シリコンに良く似た特性を示し、このクラスター分子がナノメートルサイズシリコン微結晶の発光のメカニズムを解明する上で良いモデルとなる判定した。
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