研究概要 |
一般に大規模・非線形システムを制御することは難しいが,そのサブシステムを制御することは比較的容易である.この考え方に基づき,自財分散システム(制御)の協調と大域的秩序形成に関して,非線形(偏)微分方程式モデルを用いてその特徴・性質を把握し,定式化とその具体的な応用に関する研究を行った. 昨年度までの本研究課題において,サブシステムの協調に関する成果を得ることができたので,その応用を多岐にわたり試みた.まず,四足動物の移動パターンの変化とエネルギー消費量に関する結果をまとめた(SICE'92).また,自律分散の考え方を,マルチエージェントロボットシステムへと展開した(日本ロボット学会誌,Vol.10,No.4).さらに,カムレス化エンジンに応用し,耐故障性のあるエンジンシステムの構成の可能性を示した(重点領域研究「自律分散システム」第3回全体講演会). 一方,空間パターンを大域的秩序と考えた偏微分方程式系への応用では,視覚情報処理システムを構成した.生物の視覚情報処理系は,網膜な視神経など動物な素子の集合体である.そこで行われる画像処理・認識も,各素子の動的な挙動が協調した結果である.ここで展開した方法では,各画素の局所的な相互作用のみで画面全体にわたる秩序を形成することができる.それにより,これまでのようにすべての画素間の相互作用を必要とせず,システムの巨大化を避けることができる.具体的に,自己想起型連想記憶システムを反応・拡散方程式により実現する方法を示した(ロボティクス・メカトロニクス講演会'92,重点領域研究「自律分散システム」第3回全体講演会,計測自動制御学会論文集(投稿中)).シミュレーションにより本システムが記銘パターンを完全想起する非常に優れた性質をもつことを確認した.
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