研究概要 |
マルチエージェントシステムのように,多数の自律的エージェントの集団によって構成される自律分散システムを合目的に振舞わせることは容易ではない.これは中枢的なエージェントや実時間の通信を仮定した大域的な制御が事実上不可能なためである.これらを仮定せずに,エージェント群を合目的に活動させるためには,エージェント群の間に適切な通信規約を設定する必要がある.従来のマルチエージェントシステムでは,このような規約はマルチエージェントシステムの外部にいる我々によって設計され,エージェント群はそれに従って行動するようにプログラムされていた. しかしマルチエージェントシステムがおかれる環境は,エージェント群そのものを含めてたえず変化するものと考えた方が一般的であり,通信規約も徐々にあるいは適当な時期に再構成しなければならない.もちろん我々がその作業を受け持つこともできるが,仮にそのような規約を一部でも環境に応じて自己組織化する能力を有したマルチエージェントシステムを構築できるならば好都合であろう. このような考えから,本研究では共通の言語をもたない多数のエージェント群に,それらが置かれる環境との相互作用を通して経験的かつ遺伝的に学習させることによって,徐々に共通の言語を形成させ,最終的にはその言語に基づいた最適な通信規約を自己組織化させるためのメカニズムを提案すると共に,数百から数千の人工生物群からなるマルチエージェントシステムにこれを適用し,それらが学習および進化を通して,環境に最適な通信規約を安定的に自己組織化することを実験的に示している.
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