研究概要 |
本重点研究の目的は,高機能高品質ソフトウェアはどの様に発想され,記述されていくのかという,ソフトウェア発想機構を解明し,より高度なソフトウェア開発支援,あるいは自動化の技法を確立するこである. 良く知られていることであるが,新たなソフトウェアシステムの持つ概念を定式化する際には,システムアナリストはもちろんのこと顧客の頭の中でさえ概念整理ができているとは限らない.そこで,我々はソフトウェア発想機構の中でもソフトウェア開発過程における上流工程,すなわち対象システムの機能要求の形成過程を明らかにすることを焦点をあてた.そして,(1)仕様を創造する過程を明確化することを目的とした機能要求の形成過程に関する研究を小谷が,(2)優れた仕様の概念形成のためのモデルをサポートすることをめざした仕様形成過程の支援システムに関する研究を阿草,大岩,坂部が分担した. 以下に,各々の研究成果について簡単にまとめる. 1.阿草 過去の仕様記述の参照・再利用を目指して代数的な仕様記述の類似性を定義した.また,蓄積されたソフトウェアに対する変更・修正操作を記述するための枠組としてソフトウェア操作言語を提案した.さらに,これらを統合したソフトウェア部品データベースを用いたソフトウェア開発の枠組を提案した. 2.大岩 ワークステーション上のカード操作ツールを機能拡張し,カードによる情報操作を中心とする「電子会議」システムを構築し,その評価を行なった.また,これに並行して,カード操作ツールを用いたソフトウェア仕様形成実験を行ない,その過程を分析,検討し,その有効性を確認した. 3.小谷 「対話的知識獲得」というパラダイムを用いてユーザの要求を引き出すシステムを作成し,評価をおこなった.このシステムは,開発者(SE)がユーザの要求をインタビューし,自分の中に要求を具体化する過程をシミュレートするものである.実験によって得られた,知識ベースの質およびユーザの要求に対する意識を,数量的に分析し,その効果を確認した. 4.坂部 新しい計算モデルとして動的項書換え計算(Dynamic Term Rewriting Calculus,DTRC)を提案し,簡約に基づく計算モデルにとって重要な性質である合流性と停止性について検討を加えた.
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