研究概要 |
Siaα2→6Ga1とH型あるいはSd型抗原決定基に特異性をもつキカラスウリレクチンTJA-IとTJA-IIの糖結合特異性をさらに ^1H-NMRにより詳細に解析した。その結果、TJA-Iとメチル-β-ガラクトシドとの相互作用においては、レクチン活性部位とガラクトースのH-4位が最も近く接していること、またTJA-IIとメチル-β-ガラクトシドではガラクトースのH-2,3,4,5,6位が同程度にレクチン活性部位に接していることが明らかになった。TJA-Iと極めて類似した糖結合特異性を示すカブトムシレクチン(Allo A-II)ではガラクトースの下部平面との相互作用が認められ、^1H-NMRが両者の糖認識様式の微妙な違いを明らかにするために適した方法であることが証明された。 ^1H-NMRにより、現在さらに複雑な糖鎖とレクチンとの相互作用を解析中である。一方、モンクロシャチホコガレクチン(PFA)の糖結合特異性を種々の糖鎖により解析した結果、Ga1β1→4G1cNAcβ1そのものを強く認識することが明らかになった。しかし、N-アセチルラクトサミン構造にGa1NAc,Ga1,Fucなどが結合すると反応せず、また、マンノースに結合したN-アセチルラクトサミン分岐も結合能がなくなるというユニークな糖結合特異性を示す。このような厳密な結合特異性の明らかになった十数種のレクチンをゲルに固定化し、1ナノモル以下の糖蛋白質から得られた糖鎖をレクチンカラムで系統的に分離することにより、容易に全構造をほぼ解析する方法を確立した。この方法により、肝硬変、肝癌患者血清中のトランスフェリン糖鎖を解析した結果、硬変化によりシアリルルイスX構造を持つ3〜4本鎖が増加し、癌化するとX構造は消失し、単純な3〜4本鎖が増加することが明らかになった。この現象は血清コリンエステラーゼでも確認され、硬変化、癌化に伴う糖鎖の段階的な変化の生物学的意義を検討中である。
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