研究概要 |
糖切断酵素をターゲットとした研究では、複合糖質の関与する分子認識に深く関わっているフコース残基に注目し、単糖間スルフィド結合を有する4種のよく見られる結合様式をもった二糖、すなわち、フコースがN-アセチル-β-グラコサミニドにα1→6,α1→4,α1→3結合した二糖およびβ-ガラクトシドにα1→2結合した二糖を合成し、それらのウシ生殖器由来のα-L-フコシダーゼに対する阻害作用および阻害様式の相違を明らかにし、基質特異性を探る道具としての有用性を明らかにした。さらに、より強い阻害活性の期待される5-チオ-L-フコースを非還元末端に有する二糖を合成するために必要な5-チオ-L-フコシル化にイミデート法が有効であることをはじめて明らかにした。 また、糖転移酵素をターゲットとした研究では、α(2→6)-シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.1)の受容体アナログとして、ラクトサミンの6'-デオキシ,6'-チオ,6'-テトラヒドロピラニルオキシ誘導体を合成し、転移反応に対する作用について検討した。これらはいずれもこの酵素に対し受容体アナログとしてははじめての阻害剤であるが、6'-デオキシアナログが最も強い活性を示した。さらに、6位を修飾したUDP-ガラクトースを合成して、ガラクトシルトランスフェラーゼによる6-修飾ガラクトーズ残基の転移が可能であることをはじめて明らかにするとともに、N-アセチルグルコサミンが分枝型でマンノーズに結合した三糖に対しても好収率で転移することを明らかにした。これによりα(2→6)-シアロシドの生合成を選択的に抑制するという興味あるプロジェクトに見通しを立てることができた。
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