研究概要 |
1.ファルネシルニリン酸(FPP)合成酵素のアリルニリン酸部位に関する基質特異性をゲラニルニリン酸(GPP)のアナログ基質を用いて調べた。一級のcis二重結合をもつネリルニリン酸(NPP)とイソペンテニルニリン酸(IPP)を基質とした場合,trans,cis-FPPが生合成した(収率0.7%)が,その反応性はtrans二重結合をもつGPPの場合(収率83%)に比べて極めて低かった。三級のリナルニリン酸(LPP)とIPPからtrans,trans-FPPが収率4%で生成することが見出されたが,このFPPの生成はLPPの非酵素的異性化によって生成したGPPにIPPが酵素的に縮合したものであることが実証された。すなわち,FPP合成酵素は,SPPとIPPとの反応を触媒しないことが示された。従って,FPP合成酵素のアリルニリン酸部位に関する基質特異性は高いことが明らかとなった。 2.ホウショウにおける(R)-(-)-リナロールの生合成機講をトレーサー実験により解明した。その結果,GPP合成酵素によってIPPとジメチルアリルニリン酸からGPPがまず生合成し,ついで,このGPPが酵素的に加水分解を受ける際に,立体特異的な異性化が同時に生起して(R)-(-)-リナロールを生合成していることがわかった。 3.ハッカの酵素系によるリモネンヘの酸素官能基導入機構を(S)-(-)-[9-^3H]リモネンを用いたトレーサー実験により解明した。その結果,(S)-(-)-リモネンの1位二重結合が立体選択的に酸化されてtrans-リモネン-1,2-ウポキシドが生合成し,ついでこのエポキシドが酵素的に開裂して,(+)-trans-カルベオールを生合成することが実証された。
|