研究概要 |
離断性骨軟骨炎等でみられる骨一軟骨部の繰返し衝撃損傷現象を明らにする目的から,次のような実験および理論的研究を実施し,これより衝撃応力波による生体硬組織の損傷メカニズムの基本的知見を得た。 1.生体硬組織の衝撃応力緩和効果および破壊のモデル実験.アクリル樹脂の多孔質体モデルを用い,これに衝撃応力波を通過させ,その応力波の緩和効果および破壊現象をひずみゲージ法によって把握した。その結果,空孔率の増大によって,応力波高はより低減すること,しかし応力波の持続時間は増大することが明らかとなった。また応力波による多孔質部の破壊は,応力波の入射位置か通過位置のいずれかで生じること,しかもそれらは,入射圧縮波で生ずるのではなく,反射波としての引張波によるものであることがわかった。 2.海綿骨の衝撃応力緩和効果の実験.人大腿骨骨頭中央部より採取した海綿骨骨片を試料として,これが生体液を含む場合と,含まない場合に対して,衝撃応力緩和効果がどのように影響されるかを,1とほぼ同様の実験を実施して明らかにした。その結果,骨は生体液を含むことによって,その波高が約44%も低減することが明らかとなり,生体液の衝撃応力緩和効果の大きいことがわかった。 3.固,液共存する多孔質弾性体の波動理論による解析.骨を固体からなる骨格部と生体液が占める間隙部で構成される多孔質弾性体と考え,かつ衝撃応力液を受けても,生体液の移動がないと仮定した上で,骨の波動方程式を立て,衝撃負荷に対する骨の動的挙動を有限要素法を用いて解析した。解析モデルは先の1,2の実験に対応したものであるが,これより解析結果は対応する実験結果とほぼ同様の傾向を示した。ただ応力緩和効果における波高の減少割合は,実験におけるそれが解析結果よりかなり大きいものであることが確認された。
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