研究概要 |
収束衝撃波は、体外衝撃波結石破砕術に用いられ、臨床治療技術として一般化しているが、衝撃波の収束された組織に種々の組織障害が生ずることを我々は報告してきた。このような殺細胞効果の存在は、紫外線放射線などと同様にDNAの構造上の変化を惹起し、変異原性を生じさせる可能性を示唆している。本年度の研究においては、この点について化学物質の変異原性検出に広く用いられているAmesテストを用いて検討した。実験には、2種のピエゾ素子による衝撃波源を用い、焦点領域におけるピーク圧を20MPaから1000MPaの間で変化させ、2回1秒で照射した。試験菌には、Salmonela Typhimcriumの株(TA97,TA98,TA100,TA102)を用いた。試験菌株は、衝撃波入射後にラテックス膜を張った容器を用い、菌体浮遊液に対して照射を行った。照射後、菌体浮遊液をS9mix(+),(-)の両系でアミノ酸添加最少グルコース寒天培地に重層し、培養後、復帰変異コロニー数を測定した。菌体浮遊液中に変異原物質として(DDPを添加した系についても、変異原性の修飾の有無について検討を加えた。この結果、TA97,98,100,102のS9mix(+)、(-)の両系で衝撃波照射学独では復帰変異コロニー数の増加を認めなかった。しかし、CDDPを添加した系ではコントロールに対して復帰変異コロニー数の増加傾効が認められ、特にTA97のS9mix(+)で顕著であった。以上からAmesテストを用いた今回の検討でも、あまり顕著ではないものの衝撃波による変異原性の存在が示唆された。しかし、本法を用いた検討では、DNAの著しい変化は死菌作用として働くことが予想され、今後はDNA自体の変化に対する検討を断続する必要がある。
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