研究概要 |
金属人工格子の新奇な物性の微視的な研究手段として^<197>Auメスバウアー効果を用いて研究を行った。平成2年度および平成3年度当該科学研究費補助を受けAu/Ni人工格子のメスバウアー効果測定に成功したので、その成果をふまえて継続してAuと3d遷移金属、特にNi,Feとの人工格子について、磁気秩序を示す人工格子のAu層中の^<197>Auメスバウアー効果測定を行い、層間磁気相互作用,界面磁性を非磁性原子であるAuをプローブとして明らかにし、それと並行してアイソマー・シフト値から界面構造、化学形態を、また共鳴吸収確率からAu層のデバイ・ワーラ因子を求め人工格子の力学的性質を明らかにした。Au/Ni人工格子の^<197>Auメスバウアー効果測定は平成2年度及び平成3年度にその結果を役たが更に継続して詳細な測定を行い、^<197>Au核位置内部磁場分布からAu20Å/Ni20Å,Au10Å/Ni20Å,Au5Å/Ni20Å人工格子の磁気的性質および界面構造を明らかにした。界面近傍のAu層ではスピン分極した伝導電子によって25T〜15Tの内部磁場が生じている事、20ÅAu層中心部のAuは非磁性で内部磁場の値は0であることが判明した。さらにAu/Ni人工格子のスーパーモジュラス効果を再検証する為に純Auバッファー層を含むAu10Å/Ni10Å人工格子を選び、25K,50K,75Kに温度での測定を行い、それぞれの温度での人工格子中のAuの共鳴吸収率とAuバッファー層すなわちバルクAu金属での共鳴吸収率の比較を行い、それらの温度変化から人工格子中のAuデバイ温度を決定した。得られたデバイ温度は250±20Kであり純Au164Kより極めて高い。この事は25Kでの人工格子のデバイ・ワーラー因子は純金の2.5倍にもなることが判明し、スーパーモジュラス効果が存在している事を再度明らかにし国際シンポジウムに提出した。Au5Å/Fe8Å人工格子の測定も行い、全てのAu原子は磁性を示し、内部磁場の値は100Tにもなることが始めて明らかになった。
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