研究概要 |
本研究は対象物質としてFe/Cr及びCo/Cuの2つの多層膜について実験を行ったが、前者に較べて後者は時間的な制約があり、年度終わりに実験が終了し、詳細な解析はまだこれから行う予定である。Fe/Cr系においては、その巨大磁気抵抗(GMRと略記)効果が非磁性Cr層の厚さtcrに敏感に依存することからGMRも圧力に強く依存することが期待される。本研究でははじめにFe/Cr多層膜の中でも、第一ピーク上の二つの試料A(tcr=9Å),B(tcr=11Å)とピークを離れた試料C(tcr=15Å)の3つについて巨海らにより開発された低温高圧高磁場装置を用いて高圧下の磁気抵抗効果の測定を行った。主要な結果を以下に列拳する。 (1)Fe/CrにおけるGMRの圧力効果 GMRは4.2K〜300Kの温度範囲で、約2万気圧までの範囲で測定された。その結果A,Bの試料については1万気圧まではGMRは圧力に殆ど依存しないが、これを越えると急激に減少していく。2万気圧では常圧のGMRの約70%まで小さくなった。他方Cに対しては2万気圧までGMRの大きさは殆ど変化せず、A,Bの試料と顕著な差が出た。この差は界面に依存する不安定磁気モーメントが圧力に敏感であることによるものと考えられる。 (2)飽和磁場Hgの圧力依存 Hgは圧力をかけると共に増加することがわかった。この増加は圧力に対して線型でなく、むしろ2次関数的であった。Hgは層間互作用JやFeの膜厚tfeなどと密接に関連しているため簡単な関係式を使ってJの圧力係数J^<-1>dJ/dPの評価を行った。
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