研究概要 |
プラストシアニンは光合成電子伝達反応に関与するタイプI銅蛋白質である。本重点領域研究の援助によって,平成3年度は(1)プレカーサープランストシアニンを大腸菌で発現させ,(2)プレカーサープラストシアニンをmature sizeに切断する酵素を精製し,(3)アポプラストシアニンに銅原子が配位する機構を検討してきた。本研究は順調に進行し論文として発表した。一方,mature sizeのプラストシアニンを大腸菌で発現させる系についても検討してきたが末完成であった。そこで平成4年度はつぎのような課題について検討してきた。 1)mature sizeのプラストシアニンを大腸菌で発現させる系を確立する課題。matureプラストシアニンの大腸菌中での分解を避けるために,プラストシアニンを大腸菌のペリプラズム空間へ輸送することを計画し,プレカーサーの部分が削除された中間sizeのプラストシアニン遺伝子を蛋白質工学の手法を用いて作成した。これを大腸菌で発現させたところ,銅原子が配位したmature sizeのプラストシアニンが大腸菌のペリプラズム空間に畜積することが明らかになった。このプラストシアニンは,酸化還元電位,ESR,吸収スペクトル,P700およびチトクロムfとの電子移動活性が野生型と同じであることが明らかになった。 2)matureプラストシアニンの特定のアミノ酸残基を置換したmutantを作成する課題。電荷をもつアミノ酸残基を置換したmutantを用いることにより基質認識に重要なアミノ酸残基が明らかにできるものと考え,プラストシアニンの酸性アミノ酸残基を置換したmutantを6種類作成した。mutantの精製を完了した。今後,電子移動活性を測定しacidic patchの役割を具体的に明らかにする。 3)銅の配位環境を明らかにする課題。銅の配位子の1つであるMet92を置換したmutantを6種類作成した。現在それらmutantを精製中である。 4)アポプラストシアニンに銅原子が配位する機構を明らかにする課題。これについてはすでに成果を論文として発表したが,今回,発現効率を飛躍的に向上させることに成功した。今後,銅原子の配位機構を詳細に検討する予定である。
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