研究概要 |
1.本年度は、RNAの構造研究に先立ち、DNAの二次構造の安定性を考察した。まず、各種の塩基配列をもつDNAオリゴヌクレオチドをホスホロアミダイト法によって固相化学合成した。次にこれらのオリゴマーの二次構造をUV融解曲線によって定量的に検討した。その結果、DNAの二次構造の安定性が隣接塩基対の総和によって予測できることを発見した。例えば、d(GCATATGC)の自己相補的二重らせんの安定性(25℃における自由エネルギー)はGC,CA,AT,TA,TGの各ジヌクレオチド塩基対形成のエネルギーから予測される値と±3%以内で一致した。これらの方法によって,逆に最良の塩基対形成エネルギー・パラメータを求め、それらの値を使って、任意の一次塩基配列に対応するDNAの安定化二次構造を決定し得るようなシステムの開発を行なった。現在のところ、約100塩基程度のDNAの溶液中の安定化及び準安定化構造の予測に成功している。 2.各種のDNAの二次構造の融解及び形成の反応を、温度ジャンプ装置を用いて追跡した。その結果、どの塩基配列のDNAにおいてる、これらの反応は数十ミリ秒以内で終了することが示された。例えば、20℃においてd(TAGATCTA)及びd(TCTATAGA)の反応は、各々40ms,50ms以内で終了した。また,DNAの二重らせん形成の活性化エネルギーが、d(GAATATTC)では-3.7kcalmol^<-1>,d(TAGATCTA)では-2.9kcalmom^<-1>,d(CCATATGG)では-1.8kcalmol^<-1>と負の値を示した。これらの結果及び安定化エネルギーの結果より、DNA二重らせん形成の核形成には少くとも二つ以上の塩基対形成が必要であることが認められた。
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