研究概要 |
VIb族のSeとTeは、常温常圧の下では二配位の共有結合をもつ半導体で、三方晶系に属しているが、高圧下では数回の構造相転移をするとともに金属化し、Teでは400GPa以上で超伝導を示すことが報告されている。特に複雑な中間圧力の構造での金属化と対称性の高い超高圧構造への変化は多価半導体が示す非常に興味ある現象であり、系統的な研究が望まれていた。本研究では、超高圧構造のβ-Po構造からBCC構造への相転移のメカニズムを局所密度近似による擬ポテンシャル-全エネルギー計算法に従い、Bachelet-Hamann-Schluter擬ポテンシャルとCeperley-Aldy交換・相関エネルギーを用いた平面波展開による、全エネルギー、詳細なバンド計算、状態密度の計算を行うことにより調べた。特に、β-Po構造に関しては軸比(c/a)について各体積での全エネルギーを最小にした。なお、軸化の決定においては計算精度を高めるためストレスの計算を併用した。1.β-Po構造とBCC構造について得られた状態方程式は、Se,Teとも実験結果と概ね一致している。2.特に、Seに対する軸比の体積依存在と転移点は良く合っており、Se,Teとも約0.75で転移することがバンド計算の結果から分かった。3.β-Po構造の安定化にはフェルミ面近傍のpバンドが重要であることが分かる。BCC構造ではフェルミレベルがN点上にありこれが状態密度にピークを与えるが、β-Po構造ではそれがA点(上)とX点(下)に分かれで安定化する。さらに、最隣接原子間のp軌道の結合と反結合の強さがBCC構造でより大きいことから、A軸上の分散が大きくなりバンド構造エネルギー的には不安定になる。4.さらに高圧になるとこのバンド構造エネルギーの利得より静電エネルギーの利得が支配的になりBCC構造が安定化する。
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