正方格子上の2次元±Jイジング模型に対して、グリフィス相(ランダムな系の相転移温度とランダムでない系の相転移温度の間の温度範囲)において、モンテカルロ・シミュレーションを行い、個々のスピンの自己相関関数および、その全系での平均q(t)を計算した。個々のスピンの自己相関関数は長時間で指数関数的緩和(緩和時間はそれぞれ異なる)に近づいて見えるのに対し、それらの平均q(t)は長時間で指数関数的緩和に近づているようには見えず、“引き伸ばされた指数関数"的緩和をしているように見えることがわかった。 次に、各スピンの自己相関関係の長時間での振舞いより、各スピンの緩和時間を評価し、緩和時間の長いスピンがクラスターを形成していること、そのクラスター中にはフラストレーションがないことを明らかにした。また、クラスター内のスピンの長時間での振舞いが、この“強磁性的"クラスター全体が反転する緩和時間で決っていることも明らかにした。 個々のスピンの緩和時間より、そのスピンの属しているクラスターの“有効サイズ"を定義し、その分布を調べたところ、希釈イジング模型の場合と同様の分布をしていることがわかった。さらに、この緩和時間分布からスピン自己相関関数の平均q(t)の長時間での振舞いを説明できることを示した。 これらの結果は、2次元±Jイジング模型のグリフィス相における緩和現象を、希釈イジング模型の場合と同様のクラスター的描像で理解できることを示唆している。今後、より精度良く緩和時間分布を決定すること、緩和時間分布とランダムなボンドの分布との関係を明らかにすることが重要である。さらに、いろいろなランダムネス、温度において、同様の解析を行い、クラスター的描像の有効性を明らかにしていく必要がある。 以上のほかに、イジング模型専用計算機を用いて、バクスター模型の非平衡動的臨界現象に関する研究、動的イジング模型のシミュレーションの方法に関する研究を行った。
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