研究概要 |
伊勢湾沖の浅海域から本州南方の外洋深層へ向けて、陸からの距離が異なる7測点の海底堆積物を得た。柱状試料は、三重大学練習船「勢水丸」の2回の航海(MU9201:1992.4.16-4.24,MU9213:1992.9.11ー9,30)においてグラビティー式採泥器により採取した。新たに作製した70℃温度コントロール下でイオン交換装置による分離精製(INS法)等を行ない、目的の各放射性核種を測定した。その結果、以下のことがわかった。1.陸に最も近い測点では、全 ^<230>Thの61%を陸起源が占め、最も離れた測点では、全 ^<230>Thの13%が陸起源であった。2.陸起源の ^<232>Thは、より陸側の測点で高濃度であった。3. ^<234>U/ ^<238>U比は、ほぼ1であり、放射平衡にあった。但し、大陸斜面域の測点において ^<238>U濃度は、他測点の2倍以上高く、且つ ^<234>U/ ^<238>U比は1.11±0.04と過剰の ^<234>Uが存在していた。このことは、明かに一部海水からのウランの除去が起きていることを示唆した。 ^<238>U/ ^<232>Th比から計算すると、ここでは約65%が海水起源のウランであると見積られた。4.海水起源の ^<230>Th/ ^<231>Pa比の価は、約1〜6であった。明かに海水生成比よりも小さく、本海域において海洋から優先的にPaが除かれていると結論された。陸側に近い測点は、黒潮流軸の外よりもこの比がさらに小さく、より除去が活発化していたことがわかった。5.特に、大陸斜面域でこの比が著しく小さく、 ^<230>Thの除去量が水柱内の生成量と釣り合っているとすると、生成量の約10倍量の ^<231>Paが現場に堆積していると計算された。つまり、堆積したものの約90%は他海域から運び込まれていた。このことは地理的特徴から見て、浅海域で放出された多量の陸起源粒子や生物起源粒子の流入が理由として考えられた。これらの成果は、1992年7月及び1993年1月のオーシャンフラックスシンポジウムで発表済みである。また、1993年4月の日本海洋学会で講演予定である。
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