動力波の発生源のひとつとして中性子星などの相対論的な天体が期待される。その重力波は星の固有振動で記述されるが、そのような振動のスペクトラムは回転していない中性子星の場合、又は相対論的効果がきかない回転星の場合に限って求められたにすぎなかった。そこで、回転と相対論的効果を同時に考慮しなければならない時に振動のモード、振動数がどのようになるかを調べた。その第一歩として、回転速度が小さい場合を考え、これまでに求められている回転していない相対論的な星の固有振動に回転の効果を摂動的に加えるという定式化を行った。その後、数値計算を行い、定量的に振動数がどのように回転速度の増加とともに変化するかを調べた。その結果、次の事が明確になった。(1)回転していない時はパリティによる分離していたモードが回転の影響でモード間の混合が起こり、その結合の法則はある種の法則に従うことがわかる。(2)回転していない時は縮退していた固有値が回転により縮退がとれることがわかる。また、回転と同方向に伝わる波の振動数は増加し、逆方向に進む波の振動数は減少することがわかる。そしてその変化の割合は回転速度とともに増加することがわかる。この振動数の変化は高速で回転している星での非軸対称モードによる重力波放出に伴う不安定性と定性的に一致することがわかる。現在、これらの結果をより詳しく解析を行い、検討をしている。また、これらの内容が宇宙物理学でどのような所で意義を持つかの検討も行っている。
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