研究概要 |
人の印象は,視覚刺激が同じでも環境条件の違いによって異なることがある。例えば,デザインにおいては,「朝と夜」又「今日と明日」とでは,同じ暖かい感じと言っても異なったデザインが選ばれたりする.従って人が好むデザインを自動選択するためには,視覚刺激だけでなく他の刺激との相互評価を行う必要がある.本研究は,視覚刺激と他の感覚刺激とが人の感性にいかなる影響を与えるか明らかにしまたそのような感性を計算機上に構築することを目的とする. 当核年度は,環境条件の違いによる人の印象に関する基礎実験を行った.一般に服飾のデザインは,その模様自身に意味を持つものよりも,幾何学的模様やテキスチャ状の模様が多い.そこで本研究では,幾何学模様のデザイン(視覚情報)から受ける印象について,視覚情報を中心に,他の感性情報(主に体感情報)を融合させることで両者の関係を解明することを目指した。具体的には,人間の「暑い-寒い」という感覚に注目し,2種類の画像(異なった季節)の印象度を環境の温度変化に添って調査し,視覚情報と体感情報の関連性を考察した。その結果,視覚刺激から受ける温度印象は,大きくは体感温度と比例関係にあると言うことが確認できた. さらに観測対象の位置関係(構図,配置)を知るために,環境内に置かれた物体の3次元空間構成を理解する研究を行った.凹凸を含む多面体物体に関しては,その形状モデルを獲得できた. 今後は,同一の入力シーン(同じ構図)に対し,特徴が異なる場合(シャープさ,色合いなど),また局所的に見た場合,全体を見た場合についていかなる印象を受けるかについて評価を行う.さらに複数画像から得られる位置、運動情報も利用する.そして、影響力のある特徴量から感性を導く上での基礎的問題の把握を行なう。
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