生体の支持組織の一つである靭帯は成長とともに力学的強度が増すことが知られている。また、関節可動域の制限などの種々の環境下においてその力学的持性が変化することも知られている。しかし、その本態についてはいまだに解明されていない。これらの点を明らかにするために力学的負荷の変化が靭帯(本研究では家鬼膝前十字靭帯と内側々副靭帯を対象とした。)の力学的持性にいかなる影響を与えるかを検討すると同時に靭帯内循環血流量や血管床面積にどのような影響を与えるかを生理学的手法を用いて検討した。その結果、靭帯の負荷減少後2週ではすでに新生血管が増え、血流量が増大し血管床面積も増えていることが明らかとなった。一方、靭帯の粘弾性特性も大きく変化し、その原因は靭帯内水含有量に起因すると考擦された。以上の研究の一部を第19回整形外科バイオメカニクス研究会において発表した。また、腱組織との比較においてはその構造特性の差により腱組織の方がその対応は緩徐であり負荷、除荷などの変化に応答していると考えられた。この結果もまた第19回整形外科バイオメカニクス研究会で発表した。今後はこれらの結果に基礎として生化学的手法により、靭帯内コラーゲン代謝の検討を行なう予定である。生化学的変化、生理学的変化、組織学的変化を対応させることにより、力学的環境と組織構築のメカニズムが解明されると考えている。平成4年度で用いた膝固定モデルは作成が容易であったが、靭帯に加わる負荷が一定でないために誤差が大きいため、次年度では培養細胞への負荷を考えている。
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