研究概要 |
超臨界流体は通常の液体にみられない様々な特徴を有する流体としてその利用が期待されている。また様々な分野で実用化も進んでいるが、基礎的な物性研究は緒についたばかりである。本研究では、実験的に分子レベルでの構造の情報を得るためにX線回折実験を行う。 本年度は、超臨界状態のCO_2のX線回折実験の可能性を検討した。超臨界流体を保持する試料セルとしては、高圧状態に耐える堅牢さが必要である。一方、X線を秀過させるためには、できるだけ薄い窓の使用が望ましい。これら相反する要請を満たし、現有するイメージング・プレートと呼ばれる二次元検出器付きの回折計で妥当な測定時間で測定できる試料セルを設計・製作し、10MPaまでの高圧に耐えることが確認された。X線透過窓は、高圧に耐える範囲でできるだけ薄くしたが、それでも一般のX線回折実験の場合と比較して厚すぎ、X線の透過力の減衰と窓自身からの回折が邪魔になる。前者は透過力の強いAgKα線を使用することにより解決し、後者は補正による窓からの回折X線除去の検討を行った。その結果、製作した試料セルは回折実験に使えることが判明した。 高圧液体のCO_2(圧力6.5MPa,温度18.5℃)と超臨界状態のCO_2(圧力7.31MPa,温度35℃)を対象として回折実験を行った。超臨界状態のCO_2は、密度ゆらぎが非常に大きく、クラスターのような密度が高い部分と、気体に近い密度が低い部分が混在していることが明らかになった。また、クラスター部分の構造は、高圧液体よりもかなり分子間距離が離れている。これらの実験データをもとに、詳細な定量的解析を行うことが今後の課題である。
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