流体中の反応を考える上で鍵となる過程である、分子間の接触緒体生成反応について、実験的ならびに理論的に検討を加えた。実験的には主として、二酸化炭素中のヨウ素-トリメチルアミン系の電荷移動錯体の生成反応を、理論的には井戸型ポテンシャル流体中の溶質-溶質相関の密度・分子間引力依存性を検討した。 高圧光学セルを用いた実験の結果、二酸化炭素中、換算密度0.3〜1.7の範囲で、電荷移動錯体の生成定数が密度とともに減少することがわかった。これは単純な誘電速続体モデルでは説明できず、中低密度流体の溶媒としての特性を示すものとして注目されている。この密度とともに平衡定数が減小する挙動は、井戸型ポテンシャル流体に対する計算機シミュレーションによっても再現され、今回の系に限らず、多くの二分子会合平衡で、平衡定数の負の密度依存性が現われるであろうことが期待される。 また、単分子分解反応の密度定数にも考察を進め、換算密度で0.5以下に、分子間相互作用に敏感な密度領域の存在することが明らかとなった。今回の結果が一般的なものであるかどうか他の反応系についての検討を進めるとともに、低密度側での平衡定数の挙動に興味が持たれる。
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