研究概要 |
密度が液体に近く、粘度が気体に近いという性質を持つ超臨界流体を移動相として使用するクロマトグラフィー(SFC)は液体クロマトグラフィー(LC)を越える分離性能が期待できると考えられている。しかしながら分離プロセスとしてのクロマトグラフィーは生産性が低いうえに、多くの操作・カラム条件を含むのでその設定方法は容易ではない。 本研究はSFC分離における生産性推計方法を確立することを最終目的とし、本報告では、主として低負荷量領域における溶出曲線の測定値から粒子内拡散係数、分配係数を算出しLC系との値と比較した。 日本分光Super200-SFCに準拠した装置を組み上げて、HPLC,SFCの両方に使用した。カラムとしては種々の逆相LC(ODS)カラムを使用した。また、試料は溶解度・蒸気圧・拡散係数などの文献値が入手できるものとして主としてnaphtaleneとその誘導体2-6-dimetyl naphtalene,2-7-dimetyl naphtaleneを使用した。移動相はLCとしてはmethanol-water混合溶液(70:30〜85:15)を30℃で、SFCでは二酸化炭素を34-40℃、8-15MPaで使用した。 溶出曲線からHETPを移動相線速度uの関数として測定した。この結果から求められたPe数は1.5〜2程度であり、固定相拡散係数Dsは分子拡散係数Dmの0.2-0.4倍程度に低下していた。この値はLC系の文献値と近い。粒子径と分子拡散係数とで無次元化したプロットではLCとSFCのデータはほぼ同様であった。また、SFCとLCの結果を詳細に比較してみるとPeの値がLC系より高い、すなわち軸方向の混合拡散が小さくなっていることがわかった。これは配管などの死容積による分散がSFCでは抑制されることに起因していると考えられる。拡散係数の低下率は、SFC,LCともほぼ同様な値となっていた。今後は試料負荷量の影響についての検討が必要である。
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