研究概要 |
金属間化合物を先進構造材料として、「使える材料に育てる」ためには、耐環境性が不可欠である。本研究は、室温で水素環境脆化(Environment-induced hydrogen embrittlement)の割れ感受性が大きいLl_2型Co_3Ti化合物を中心にして、「金属間化合物が、室温で高い水素環境脆化感受性を示すのは、どのような化合物表面性状によるのであろうす?そのために、組成元素である純金属に比べて圧倒的に不足している金属間化合物表面の水素反応特性に関する基礎的知見を蓄積する」ことに平成4年度は努力した。得られた研究実績は以下にまとめられる。 1.(1)粒界型水素脆化を生じるCo-23.1at%Ti,Co-21.1at%Ti、(2)耐水素脆性に優れたCo-21.4at%Ti-2.9at%Fe,Co-20.9at%Ti-2.1at%Alの特徴的な2種類のLl_2型Co_3Ti系化合物の試料について、小型パンチ(SP)試験によるSP破壊エネルギーに及ぼす温度、環境(大気、真空中)、変形速度、FeおよびAl添加、破壊形態の影響を詳細に調べ、室温、8.1X10^<-5>Paの高真空中においても破壊エネルギーは顕著な変形速度依存性を示す事実を見い出し、この劣化現象を“water vapor-induced hydrogen embrittlement"と呼び、検討した。 2.303K,0.5kmol/m^3H_2SO_4中のカソード分極曲線、腐食電位(Ecorr)の変化、Bode線図と複素インピーダンスの測定を行い、(1)Co_3Ti金属間化合物電極表面は、Co、Ti、Fe、Al純金属電極表面より水素電極反応が活性であること、(2)FeおよびAl添加により表面酸化物サイトが還元されやすくなることなど、水素脆化感受性を有する金属間化合物の水素電極反応のkineticsに関する知見が得られ、今後の研究の進展の手掛かりができた。 3.粒内劈開型水素脆性を生じるTi-50.9at%Al(γ),Ti-45.0at%Al(γ+α_2),Ti-34.0at%Al(α_2),Ti-24.0at%Al(α_2)なるTiAlの耐食性、カソード分極曲線、インピーダンス特性は、Ti含有量に依存した電気化学的挙動を示し、Ti-24.0at%Alには水素化物の形成が示唆された。
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