研究概要 |
2-1-4系酸化物超伝導体には二次元CuO_2面のCuの上下に酸素が位置するかいなかで3種類のCu-Oネットワークがある。すなわち,(1)八面体,(2)ピラミッド,(3)正方形の3種の構成要素である。これらはそれぞれT-相,T^*-相,T′-相と呼ばれている。本研究ではこの3種類の酸化物超伝導体に対して熱伝導度の温度依存性を測定し比較検討することを目的としている。T-相としてLa_<2-x>CaxCuO_<4-y>(LCCO),T^*-相としてLa_<0.84>Sm_<0.96>Sr_<0.2>CuOy,T′-相としてPr_<1.85>Ce_<0.15>CuO_<4-y>(PCCO)およびSm_<1.85>Ce_<0.15>CuO_<4-y>(SCCO)の試料作製を行った。いずれもX線回折および電気抵抗の測定によって,目的とする試料が得られていることを確認した。T-相のLCCO系については0.06≦x≦0.2で12個の試料を作製し,超伝導転移温度Tcの組成x依存性を調べ,LSCO系と同様にx=0.12付近でTcの変化が見られた。酸素量をヨードメトリーにより調べx≦0.15で4-y=3.98±0.02で一定であった。また,熱伝導度の温度依存性についてはx=0.065の試料に対して測定を行い,LBCUやLSCOとほぼ同様な結果が得られた。T^*-相の試料は高圧酸素下での作製が必要であり,漸く,試料ができるようになった段階である。熱伝導度を測定するための大きな試料を作製することが今後の研究課題である。T′-相ではPCCOの熱伝導度の温度依存性を測定した。その結果はフォノンの熱伝導が他の酸化物超伝導体より強く,同じくT′-相であるNd-Ce-Cu-O系とほぼ同様な温度依存性の振舞いを示した。すなわち,T-相に比べて大きく,60k付近で極大をもつことが分った。このことより,T相との違いが物質による違いというよりもT′-相としての違いによるものと推察される。
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