研究概要 |
高温超伝導体の混合状態の振舞いは従来型超伝導体と著しく異なる。代表例が非可逆曲線の存在である。この曲線の起源として,磁束格子の融解相転移・磁束グラスの融解相転移・ピニング外しのクロスオーバーが提案されている。しかし,決着はみていない。一方,実験的に見れば如何に非可逆曲線を決めるかについて問題が存在する。我々は,非可逆曲線は非線形性のオンセットとして定義する立場であり,これは非可逆曲線の起源に依らない。今年度,我々は非可逆曲線の決定法として3次の非線形帯磁率の虚数部に表われる負のピークを採用することを提案した。また,臨界状態モデルから物理的意味付けを明確にし公表した。今年度配付を受けた予算から7次までの高調波の測定が出来るロックイン増幅機を購入した。これによって,コンピュータコントロールの非線形帯磁率の測定装置が完成した。また,データ処理システムについてもソフトウエアの充実につとめた。YBCO薄膜で非可逆曲線の詳細な測定を行った。この曲線は両対数グラフでH-(Tc-T)のプロフトをみると,2段階に急激な変化を示す部分があることが分かった。この急激な変化は既存の理論では説明できない。我々が今年度開発した非線形帯磁率による非可逆曲線の決定法を利用して,前述の急激な変化の要因を調べることが次の段階の研究である。
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