研究概要 |
高温超伝導体のクーパーペアの構造と準粒子のトンネル効果で観測されている励起スペクトラムの関係について研究を行った。我々は、立木らにより導入された層状タイトバインディングモデルを様々な方向に拡張を行って、この問題を調べた。複数のCuO_2平面をもつ物質の代表としてTl_2Ba_2 Ca Cu_2 O_8における面内(CuO_2)面間ペアリングの共存について簡単な計算をおこなった。我々はKasowskiらのバンド計算にもとづいて電子状態のパラメーターを選んだ。TlO面のトンネルコンダクタンスはフェルミエネルギー近傍でほとんど一定で、原子尺度での近傍効果は期待できない。またCuO_2トンネルコンダクタンスにはペアが共存する特徴がみられた。次に、面内のクーパーペアの可能性についてS波d波あるいはその混じった状態について検討を行った。Kasowskiらのバンド計算から得られる分散に基づいて計算すると、拡張S波を起こらないこと、さらにBCS的なS波よりはd波の方がおこりやすいことが明らかになった。S,dの両方の秩序がある時はトンネルコンダクタンスの振舞いはCV=OにおいてBCS的な平な分部が現れている。d波超伝導体にS成分を混ぜることで、スペクトルはdからS的に変化することも明確にした。我々は、さらに超伝導近接効果に与えるペアの異方性についても検討を行っている。超伝導/常伝導接合、超伝導/常伝導/超伝導接合における常伝導領域の準粒子状態がペアの異方性にどのように影響されるかは興味ある問題である。我々はタイトバインディングモデルに基づいた超伝導近接効果の定式化を行った。特にこの方法では従来の近接効果で取り扱われていない異方性超伝導の研究を行うことが可能である。
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