本研究においては高温超伝導体の中でも特にYBa_2Cu_3O_<7-δ>(YBCOと略記)とLa_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCOと略記)の2つに系に着目し、これらの電気抵抗、熱膨張及び高圧下のX線回折法を用いて圧縮率(k)の測定を行なった。主要な結果を箇条書きにすると以下のようになる。 (1)圧縮率異常と超伝導特性 高温超伝導体の結合特性が超伝導特性とどのように関係しているかを調べるため、YBCO系においてはδの異なる試料の、又LSCO系においてはSr濃度xの異なる試料圧積率k(又は体積弾性率)を測定した。LSCO系においてはkのx依存はx=0.3付近にピークをもった。これは超伝導が消失する濃度に対応する。即ち超伝導の出現と系の結合力は密接に関連していることがわかった。YBCO系でも同様にδ=0.8で最大値を持ちこのことが確認された。 (2)熱膨張率異常と超伝導特性 結合力に密接に関連しているものの中に熱膨張率(α)がある。本研究では常圧下において動歪み計(strain gauge)を用いてLSCO及びYBCOのαを測定した。αの室温における値を調べたところ、LSCOではx=0.3で、又YBCOではδ=0.8で最小値をとることがわかった。このことは超伝導を示す物質ではαは小さくなることを示唆している。但しLSCO系では高温での結晶変が存在するため定量的議論をするためには更に詳細な実験をすることが望まれる。
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