研究概要 |
1[Ru(II)H(S_2CNMe_2)(CO)(PPh_3)_2]とPhSH,EtSHと反応させることにより[Ru(μ-SR)S_2CNMe_2)(CO)(PPh_3)]_2^<n+>(0,4)をそれぞれ合成した。チオフェノール架橋複核錯体は,同時に4電子もの多電子移動を可逆に示す。1分子で同時に4電子もの多電子移動を示す報告は前例がない。酸化還元に伴う大きな構造の変化が観測されており,硫黄原子の存在とジチオカルバメイトの共鳴効果および金属間結合が高酸化状態の安定化に大きく貢献していることがX線構造解析の結果と分光学的データから明らかになった。また,電子豊富な還元体はCOとPPh_3のπ-back-donationの効果により安定化されていることが明らかになった。一方,エタンチオール架橋複核錯体では,2電子2段階の多電子移動が観測されたことから架橋配位子の違いによる酸化還元反応の制御の可能性が示唆された。基質の取り込み反応を行う足掛かりとしてピリジン中で光反応を用いた[Ru(II)(μ-SPh)S_2CNMe_2)(CO)(PPh_3)]_2の配位子置換反応を試みたところ,COの脱離は起こらずPPh_3とピリジンとの置換反応が観測さた。反応生成物は出発物質よりも置換活性になっていることが判明した。2.[RuCl(TMP)_2]_2(μ-Cl)_2(μ-S_2)を合成しRHNNHR(R=SiMe_3)および無水ヒドラジンと反応させたところ,還元されることにより混合原子価錯体が生成しNH_2NH_2が取り込まれた。X線構造解析の結果,分子内および分子間水素結分によりヒドラジンが安定化されており,Ru_2S_2コアーが基質を取り込む適切な空間を有していることが明らかになった。しかも,容易に酸化還元される電位を有しており,さらにアンモニアまで還元される可能性がある。[RuCl(TMP)_2]_2(μ-Cl)_2(μ-S_2)はアセトニトリル中で水により還元されて[{Ru(2.5+(AN)_3(TMP)_2}_2(μ-S_2]^<3+>が生成した。この反応の第1段階であるClとアセトニトリルとの置換反応は,水の共存下ではじめて進行する。この錯体はアルキン類やアセトンなどと容易に反応する。
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