研究概要 |
1.強い外部磁場存在下における化学反応を考える際の基本となる"磁場の衣をまとった分子"の電子状態の計算を行なうab initioに基づく汎用プログラムを開発した。このプログラムを用いてH^+_2、H_2、HeH^<2+>分子イオンに対し非常に小さな基底関数系で試験的な計算を行なったところこれまでに得られている精度の良い計算と最大3%の差で一致した。2.高い電子状態においては核のクーロン力と磁場による力がより低い磁場で拮抗してしまうため軌道角運動量の大きい分極関数を基底関数に加えてやらないと良い記述ができないことがわかった。3.断熱ポテンシャルの交差点でのエネルギー差が磁場の強さに2次に依存すること、このエネルギー差への磁場効果は磁場が町さい領域では負に働くためある磁場で零になりその後増加するという性質を持つことがわかった。4.半古典的緊密結合方程式に磁場の効果を取の込むことにより磁場存在下における断熱ポテンシャル間の乗り移りの遷移確率を計査するプログラムを開発した。5.電子状態の計算結果および遷移密度の考え方を用いてSO_2分子をC^1B_2状態に励起させると起こる磁場消光の機構について解明を行なった。磁場のない状態でC^1B_2状態は2^1A_1,3^1A_1状態にポテンシャル交差という形で前期解離できる。特に3^1A_1とは相互作用が強い。磁場はこの2^1A_1,3^1A_1への前期解離を変調させるとともに、新しいチャンネルとして1^1A_2状態を開き統計的極限に相当する無輻射遷移をおこさせる(DM)。3^1A_1、1^1A_2状態への反応は実験で観測させている磁場消光における過剰エネルギー依存性も説明できることがわかった。
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