研究概要 |
低次元鎖金属錯体は低次元鎖有機物や無機物に比べていろいろな電子状態や構造を持つように設計することが容易であると考えられる。すなわち、金属イオンの特微と設計が容易な有機配位子の特徴せ合目的的に組み合わせと錯体分子を合成し、それを目的に応じて一次元、二次元、三次元に並べる。更にこの場合、分子同士を直接つないだり、架橋分子(原子)によりつないだり、また異なる分子同士を並べる。このような低次元鎖金属錯体において鎖内・鎖間相互作用を制御したり、外場(光、圧力、温度等)を加えたり、ドーピングを行うことにより、磁性と伝導や磁性と光の相互作用などによる新しい磁気的相互作用を開発することが本研究の目的である。具体的には一次元S=1/2、S=1,S=3/2系と二次元S=1/2系の合成を行い研究を進めている。 S=1/2系として単核一次元Ni(chxn)_2X_3(chxn=dianinocyclohexane:X=C1,Br.mixed-halide)および二核一次元M_2(dta)_4I(dta=dithioacetato:M=pt,Ni)を合成した。Ni(chxn)_2X_3化合物では各Ni^<3+>上のdz^2軌道(一次元方向)にあるスピン間に非常に強い反強磁性的相互作用が働いている。また、M_2(dta)_4Iは二核分子内どは(dσ)^2(dσ^*)^1の電子状態を持ち、各二核分子上の1個のスピン間に強い反強磁性的相互作用が働いている。これらはいずれも架橋ハロゲンが金属間の中央にあり、パイエルス歪のないモット・ハバード状態である。特にpt_2(dta)_4Iは室温付近で金属的挙動を示している。これらの化合物は酸化物銅高温超伝導体の一次元モデル化合物と考えられ、ドーピングによる伝導電子と局在電子の関係を調べている。S=1系はハルデンギャップを持ち系として最近盛んに研究が行われている。金属イオン、面内配位子、架橋子のハルデンギャップに対する効果を調べている。s=3/2系として二核一次元化合物Ru_2(carboxylato)_4X(X=Cl,Br,I)を合成した。現在、磁化率測定中である。
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