研究概要 |
化学反応の研究において、反応物と生成物を含むポテンシャル面を精度良く計算することは、重要である。精度を上げるためには、まず豊富な基底関数系を使う必要がある。この時、postHF計算においてー電子軌道を制限しなければならない。この際用いるー電子軌道の種類によって、軌道を制限した時の誤差が左右されるため、電子相関を簡潔に表現する軌道の利用が重要になる。部分系で求めた自然軌道が全体系でも有効であることが、いくつかの分子で確認された。本研究では、部分系の自然軌道の化学反応系における有効性を見るために、シクロブタンの開裂反応の中間状態と遷移状態のCI計算を行なった。基底関数として4-31Gを用いた。各核配置は、Bernardi等がMCSCFによって決定した、ゴーシュシクロブタン型遷移状態、ゴーシュ型中間体、ゴーシュ型遷移状態、ゴーシュ-トランス型遷移状態、トランス型中間体、トランス型遷移状態の6つの核配置である。 計算は、まず(4,4)MCSCFを行ない占有軌道を決め、エチレンで求めた自然軌道を相関軌道として使い、相関軌道を制限した時のエネルギーの劣化の程度を調べた。例えば、相関軌道の個数を36から22に制限しても、相関エネルギーは85%も得られた。一方,SCF軌道の仮想軌道を相関軌道として使った場合、同様の制限をすると、相関エネルギーは50%程度しか得られない。さらに、各状態間のエネルギーの相対位置も0.03eV以内の変化にとどまることがわかった。この時のCIの次元数は、制限しない時の約37%になる。このように、部分系から合成した相関軌道は、反応系においても非常に有用であることが明らかになった。
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