研究概要 |
本研究では、非対弥なπ平面をもつシエンとして5位にヘテロ原子置換基を有するシクロペンタジエン誘導体(1:X=NH_2,PH_2,AsH_2,SbH_2,OH,SH,SeH,TeH,F,Cl,Br,and I)を選び理論及び実験(1:X=PhS and PhSe)の両面から検討を加えた。 Diels-Alder反応ではジエンは通常、電子供与体として働くことから、π面選択性を予測するにはジエンのπ平面のどちら側にπ-HOMOが広がっているかを明らかにすればよい。軌道混合則によると軌道の混合はエネルギー準位の関係から以下の3通り、すなわち(A)ε_n〉ε_π;(B)ε_n-^^〜ε_π;(C)ε_n〈ε_πに分類できる。(A)の場合、ジエンは、Syn-面選択性を、(B)の場合では、π面選択性を示さないことが期待される。また(C)ではジエンはAnti-面選択性となることが期待される。 軌道のエネルギー準位はイオン化ポテンシャル(IP)により容易に見積ることができる。酸素族置基を有するシクロペンタジエンの場合を例にあげる。IPから軌道のエネルギー準位はε_<n(o)>〈ε_<n(s)>-^^〜ε_π(cyclopentadiene)〈ε_<n(Se)>の順に増加することは明らかであるジエンは、それぞれ(A),(B),(C)に分類できる。STO-3Bレベルでのab-initio分子軌道計算の結果および実験結果は、軌道混合則による予測と非常により一致を示している。 さらに、MOPACのPM3法を用いて無水マレイン酸とのDiels-Alder反応の遷移状態構造を最適化し活性化エネルギーを求めた。活性化エネルギーは5位の置換基に依存して変化し、置換基XがOH基ではSyn面選択性となることが期待された。実際、酸素置換基では高いSyn面選択性を示すことが報告されている^<1)>。1)M.Ishida,Y.Beniya,S.Inagaki,and S.Kato,J.Am.Chem.Soc.,1990,112,8980および引用文献
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