研究概要 |
グラフの3次元空間(または3次元球面)の中への埋蔵に対して,最も自然な位相的な同値関係は(1)全同位である。一方,結び目や絡み目に対しては,(2)絡み目コボルディズム(3)同位,(5)絡み目ホモトピーナどの,幾つかの重要な位相的同値関係が定義され,研究されてきた。この研究ではまず,これらの同値関係を空間グラフに対して自然に一般化し,次に新しい同値関係(4)I-同値,(6)弱絡み目ホモトピー,(7)ホモロジー,(8)Z-2ホモロジーを導入した。そしてこれらの同値関係の間に次の基本的な関係があることを示した。 →(2)→(1)(4)→(5)→(6)→(7)→(8)→(3)→ そしてこれらの同値関係に関して,次のような結果を得た。 (1)グラフGが(i)-同値を除いて一意的であるとは,Gの任意の2つの空間への埋蔵が(i)-同値となる場合をいう。各i=1,2,…8について,(i)-同値に関して一意的であるようなグラフの類を特徴づけた。 (2)1960年にW.T.Wuによって定義されたn次元空間内の有限複体に対する不変量を空間グラフについて詳細に研究し,これを用いてグラフGの3次元空間への埋蔵のホモロジー分類を与えた。また,空間グラフの正則表示からWuの不変量を計算する方法も与えた。 (3)テータ曲線とは,2つの頂点とこれらを結ぶ3本の辺から成る特別なグラフをいう。テータ曲線の空間への埋蔵f,gから,テータ曲線の新しい埋蔵f#gが自然に定義される;これをfとgの頂点連結和と呼ぶ。結び目のコボルディズム群と同じように,テータ曲線の空間への埋蔵のコボルディズム類の全体は,この頂点連結和を演算として群となることを示した。また,この群を結び目のコボルディズムと絡み目コボルディズムによって詳しく研究した。 2.頂点の近くが剛体的な空間的グラフの正則表示の交点数を,そのYamada多項式の簡約次数の言葉で評価した。最大次数が3以下のグラフについては,このような制限は意味を持たないので,この評価を用いてテータ曲線を中心に多くの空間グラフの最小交点数を決定することができた。
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