研究概要 |
ニホンザルの音声弁別行動に伴う誘発電位を記録し、これと大脳皮質聴覚野ニューロンの反応の記録と比較することによって聴覚情報処理機構を明らかにしようとした。まず音声弁別行動の訓練を行い、音声弁別課題について検討した。レバー押し行動によってジュース・リンゴ片を与える簡単な課題より始めて次第に高度な課題とし、最終的には遅延見本あわせを行いうるようにした。次に課題刺激音声について検討した。カテゴルカルな音声弁別課題を想定して2種類のcoo soundをとりあげこれと類似の音声をコンピュータで作成した。1つはsmooth early highのように基音の周波数が高いところから低く変化するもので、他はsmooth late highのように低い周波数から高い方へ変化するものである。実際の音声には基音と5〜10個の倍音が含まれているが、基音ないし倍音成分の1つだけを合成して課題とした。次のような2通りの音を合成して試用したところ、100,200,300,400HZの各周波数から500HZまで上昇し、100HZに下る音声および100HZから500HZに上昇し、100,200,300,400の各周波数に下る合計8個の合成音の間の弁別は音声開始の周波数のちがいだけを手掛りに弁別しいるように思われたので,400HZから500HZに上昇し100HZに下降する音声で、500HZに達する時間経過が異なる8個の合成音(A_1,A_2,A_3,…A_8)を弁別させる課題が適当であるように思われた。反応時間の測定ではA_1とその他の音、A_8とその他の音の間はよく弁別したが,A_2〜A_7のような音の間の弁別については一定の結果とならなかった。誘発反応についてはまず麻酔下にABRを記録し、次に無麻酔下で遅い潜時の反応の記録を試みた。ABRは通法のような結果をえたが、MLR,SLRについては弁別課題に動物を集中させる工夫が必要であると思われた。
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