研究概要 |
本研究では、海馬のニューロンとそれに入力する中隔野ニューロンやウシガエル交感神経節ニューロンを対祢として、シナプス伝達物質の作用によるイオン電流や細胞膜の興奮によるCa^<2+>の流入、さらに2次的に増加する細胞内Ca^<2+>イオン濃度[Ca^<2+>]_1の上昇を、細胞膜電位(または電流)固定法と蛍光による細胞内Ca^<2+>濃度測定法により記録し、単一ニューロンへの種々の入力がどのように統合されるかを調べるのが目的であった。 今年度の研究では、Ca^<2+>誘起性Ca^<2+>遊離チャネルの活性化が細胞膜周辺で強く起こり、しかも単一の活動電位によるCa^<2+>流入では無視できるほど小さいが、活動電位の繰り返し(20Hz,5秒間)では顕著に膜直下でのみ起こることが明らかになった。これは、Ca^<2+>-誘起性Ca^<2+>遊離チャネルの阻害剤であるライアノジンが、膜直下の[Ca^<2+>]_1の指標としてのCa^<2+>依存性K^+電流を抑制するが、同時に記録した細胞質全体の[Ca^<2+>]_1の指標としてのfura-2の蛍光にはあまり影響しないことに基づく。さらに、海馬のスライスの錐体ニューロンで、Ca^<2+>誘起性Ca^<2+>遊離チャネルの活性剤であるカフェインが、活動電位の後電位を延長し、細胞膜の抵抗の増加を伴って脱分極することから、海馬のニューロンのオーガネラにCa^<2+>誘起性Ca^<2+>遊離チャネルが存在し、種々のCa^<2+>上昇入力により活性化され、種々のCa^<2+>感受性イオンチャネルを活性化したり、脱活性化することが示唆された。一方、培養中隔野ニューロンでは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)タイプのグルタミン酸受容体チャネルがグルタミンの存在下でのみ活性化されること、GABAa受容体チャネルの陰イオン選択性(Pscn,1.72;Pi,1.6;Pbr,1.55;Pci,1;Phco_2,0.42;Pf,0)が脊椎ニューロン(Pscn,7.3;Pz,2.8;Pbr,1.5;Pci,1;Phco_2,0.50;Pf,0.02)とはかなり異なること、さらにグリシン受容体チャネルの存在が明らになった。
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