研究概要 |
Scidマウスには、従来nudeマウスに生着しなかったヒト腫瘍が増殖かつ転移することが判明した。更に、以下に述べる如くscidマウスを改良することにより、これまで実験動物には生着したことのないヒト良性腫瘍や正常組織(ヒト骨髄,皮フ)も増殖維持できることを明らかにした。Scidマウスへのnu^<str>、bg等の免疫不全遺伝子の導入に加え、選択交配によりC.B17-scidマウスを改良することにより、ヒト骨髄細胞の分化、機能研究システムを開発した。 1.C.B17-scidマウスの改良:現在、各国で使われているC.B17-scidマウスは、約30%が若年で白血病死する。また、T細胞、B細胞ともにleaky(約50%が一部正常に戻ってしまう)なため、ヒト腫瘍およびskin allograftの生着率も悪い。C.B17-scid/scidマウスでIgG,JgMともに検出限界以下(<1.0μg/ml)のマウスを毎世代bxs交配することにより、T細胞、B細胞のleakはなくなり(4%以下)、白血病も発生しなくなる(0%)ことがわかり、無菌室内にて系統化を終了した(F_<20>)。 2.scid遺伝子の他系統への導入:C3H/HeJおよびC57BL/6Jマウスへscid遺伝子の導入を終了した。 3.nu^<str>、bg^J、W^V遺伝子の導入:C.B17-scid、C57BL/6J-scidマウスへ上記遺伝子の導入を行っている。 4.ヒト組織の移植:scidマウスの改良過程において、ヒト正常骨髄細胞の移植を行った。その結果、ヒト正常骨髄吉胞(5×10^6)を9匹のscidマウスに腹腔内注射したところ、5匹にヒトCD3、CD2陽性細胞がマウスリンパ球に対し、0.6-3.3%の割合で出現していた。またヒトIgG値も50-100μg/mlの高値を示した。移植した細胞数が5×10^6であることを考えるとかなり有効に生着しているものと考える。しかし、未で6ヶ月以上の生着には成成していない。
|