研究概要 |
1)心拍リズムの中枢となる洞結節細胞の興奮発生には電位および時間依存性の各種イオンチャネル電流(I_<Ca>,I_f,I_<Kl>,I_K)が重要ではあるが、加えてI_<Na-Ca>交換電流、Na-Kpump電流、I_<KAch>,I_<Cl>などによる背影電流も重要であることが洞結節細胞膜電位固定実験とそれに基づくシミュレーションにより明らかとなった。 2)これまで困難であった作業心筋の興奮伝導を規定するNaチャネル電流のモデルを、膜電位固定実験と生理的条件下で記録した活動電位立ち上がり相の総膜電流測定から構成し、心筋組織の細胞構築を配慮した2次元モデル上で興奮伝導をシミュレートすると、心筋多細胞標本で得られた興奮伝播特性をよく反映した。 3)心筋細胞の不応期を規定する再分極では種々の電流系が関与するが、病態生理的には細胞内Ca^<++>により修飾されるI_<Na-Ca>交換電流、I_K,I_<to>,I_<Cl>が重要な役割を果たしていることがシミュレーションで想定され、実験的にもこれが裏付けられた。 4)ヒト心房と心室の立体構築を約50,000ユニットに分割してコンピュータ中に記憶させ、各ユニットのそれぞれに実験的に得た固有の膜活動電位特性を与え、心臓の興奮伝播をシミュレートさせた。致死的不整脈、なかでも最も危険な心室細動の機構としては、ユニット間での再分極特性の不均一性の増大が重要であり、とくに実験的に得たPurkinje線維と心室筋間でのそれを設定することにより心室細動をシミュレートすることに成功した。これにより、心室細動の予防と治療の可能性を検討することが可能となった。
|