研究概要 |
38の研究系において,細胞特異性の決定に関わる転写制御因子の役割についての解析が行なわれた。そのうち主な成果について述べる。 谷口は,インターフェロンβ遺伝子の発現調節領域内の共通配列に結合するIRF-1および-2因子について解析してきた。IRF-1は転写活性化因子,-2は抑制因子として拮抗的に作用する。IFN刺激時にはIRF-1が一過的に誘導され,IRF-2:IRF-1比の減少がおこる。血清除去によるG1 asrest時にも比が減少し,増殖刺激により増加する。IRF-2高発現NIH3T3株を遺伝子導入によって確立し,-2がoncogenic poteutialを有することを見いだした。これにさらに-1遺伝子導入をすることにより,野生型にもどるanti-oncogenic potentialを見いだした。 鈴木は,絹糸腺特異的に発現されるセリシン-1遺伝子のSC領域に結合して,おそらく転写を促進しているとおもわれるPOU-M1因子およびそのゲノム遺伝子の転写制御について解析した。ゲノム遺伝子プロモーター内に複数の正および負に働くcis-acting elementsを同定した。そのうちの一つPBelmentにはPOU-M1因子自体が結合し,しかも転写を抑制する自動制御について明らかにした。 山本は,赤血球系細胞の分化に深い関わりをもつGATA-1とGATA-2両因子が共に同時に発現していること,-2因子の方が-1因子よりも強いaffinityでGATA配列に結合することを明らかにした。GATA-1は,増殖や分化の各段階を通して恒常的に発現されているが,-2は発現レベルが大きく低下するなどの変動を見せ,これらの制御が血球系細胞特異的な遺伝子の発現に大きく影響していることが明らかとなった。 以上のように,細胞が特異的な変化をするさいに,各種転写制御因子がどのようにふるまって下位の遺伝子を制御するかを明らかにできた。
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