本年度はまずmaf遺伝子産物が認識するDNA配列の決定を行い、13塩基対からなる回文配列が特異的認識配列であることを明らかにした。この配列をプロモーター配列の上流につなぐと、プロモーターがMaf蛋白質で活性化されることも確認され、細胞内で転写因子として機能することが確認された。また決定した認識配列を含むオリゴヌクレオチドを合成してこれをゲルシフトのプローブとして用いることによりMaf蛋白質のDNA結合活性に必要な機能ドメインを決定した。決定された機能ドメインハ他のロイシンジッパー構造を持つ転写因子と比較してかなり長く、これはMafの認識配列が他の転写因子よりも長いことに対応すると考えられる。現在は認識配列をDNAデーターベースから検索して実際のMaf蛋白質の標的遺伝子と考えられる遺伝子の候補のリストを作成することができたので、これらについてのMaf蛋白質による誘導の可否を検討している。また新しいmaf関連遺伝子、mafGを同定し、構造決定を行った。これでmaf関連遺伝子は海外から報告のあったひとつを加えて合計6つになった。mafG遺伝子はこれまでに解析したmaf関連遺伝子のうち、mafK、mafFの2つとよく似ており、転写活性化ドメインと考えられる部分を欠く、かなり小さい産物を作ると考えられる。これらの関連遺伝子産物は転写抑制あるいはco-factotとしての機能を持つことが予想されるが実際の証明は今後の課題である。
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