研究概要 |
制癌剤耐性因子としてのメタロチオネイン(MT)の意義を検討するために,HeLa-S3細胞にマウスMT-IのcDNAを導入することにより樹立したMT-Iを多量かつ安定に発現するクローンを用いて以下の実験を行った。このクローンをヌードマウスに皮下移植して細胞内MT濃度とシスプラチンに対する感受性との関係を検討したところ,皮下移植した本クローン中のMT濃度は対照として用いたベクターのみを導入したHeLa細胞に比して約3.5倍高いMT濃度に示し,しかもシスプラチンに対して著しい耐性を示した。この結果は,細胞内MT濃度の上昇が癌細胞のシスプラチンに対する耐性獲得に関与することを強く示唆している.我々は昨年度,亜鉛による癌組織中MTの誘導合成をpropargylglycine(PPG)が抑制することを見いだしたので,このクローンを皮下移植したヌードマウスを用いてPPGの効果を検討した.その結果,クローン中のメタロチオネイン濃度はPPGの投与によって有意の減少し,しかもこのクローンのシスプラチンに対する抵抗性も顕著に低下した。即ち,PPGは誘導剤投与による組織中MT濃度の上昇を抑制するのみならず,腫瘍細胞の種類によってはそこで恒常的に発現しているMTのレベルを低下させる効果も有することが明らかになった。
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