研究概要 |
近年,無髄の1次求心性神経に含まれる神経活性物質がいくつか同定され,それらの分布等は詳しく研究されてきた。しかしながら,各物質の機能的役割は未だに明確ではない。特にsubstanceP(SP)は古くからC侵害受容線維終末から放出される伝達物質の候補とされてきたが,最近,急性の痛みの伝達物質ではなく,慢性痛における伝達物質または侵害情報伝達の調節、あるいはその両者をおこなうことを示唆するデータが報告されている。 本研究は,抗SubstanceP(SP)血清及びNK-1アンタゴニスト(CP-96345)脊髄局所投与後における麻酔下ラット脊髄後角侵害受容ニューロン(特異的侵害受容ニューロン;NS,広作動域侵害受容ニューロン;WDR)の末梢刺激応答、特にC線維入力によると考えられる長潜時発射、の変化を調べた。使用した抗SP血清は検定の結果、RIA系の感度は反応チューブ当たり1pgであり、NeurokininA,Bとは0.01%の交差反応を示した。33個のニューロンのうち8個(NS;4,WDR;4)は抗血清5-10μ投与後、10-30分ぐらいで末梢電気刺激に対する長潜時発射(110-500ms)が減少し始め、投与後1時間前後で最低に達したが、完全な消失はみられなかった。残りのニューロンは全く変化しないが、逆に暫増するものもあった。一方、CP-96345(20-50nmol)は抗SP血清よりも短時間で長潜時発射を抑制し投与後ACSFによる潅流を早めることで回復開始時間も短縮された。また、完全に長潜時発射が消失するニューロン、全く抑制効果のみられないニューロンもみとめられた。 これまでSPが侵害受容ニューロンでの神経伝達/調節に関与することが示唆されてきたが、以上の結果は、一部のニューロンではSPが関与していることを示すものと考えられる。
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