研究概要 |
細胞複製にあたっての細胞周期上での主な制御点は、G1期中でG0期ではなくS期に向けての進行を決定するスタート点、S期開始点、およびM期開始点の3点である。本研究の目的は、これらの点で移行をサイクリン依存性cdc2関連キナーゼ群(CDKs)が制御する機構を明らかにすることにあり、本年度に得られた成果は以下の通りである。 1.細胞周期調節関連遺伝子群として、ヒトデ卵からcdc2,cdk2,cdc25,サイクリンA,サイクリンC,カエル卵からサイクリンC,サイクリンD1とD2,suclのcDNAをクロン化した。現在、大腸菌で発現させた蛋白質あるいはC末オリゴペプチドを抗原として、抗体を作製中である。特にサイクリンCとCについては、卵母細胞から得られた最初のいわゆるG1サイクリンである。受精によるS期の開始や中期胞胚でのG期の創設など、初期胚ではS期制御が特異的であるといえ、この視点からG1サイクリンの機能を蛋白質レベルで現在解析中である。 2.減数分裂ではM期が連続しており、その間にS期がない。それがいかにして保障されているかを、カエル卵成熟の系で解析した。その結果、Interkinesis期は核膜形成能もDNA複製能も有しているが、それをスキップして次のM期に入るためには蛋白質合成が必要であると判明した。現在、この新たに合成される蛋白質の実体を追求中である。 3.ニューロフィラメントH鎖tail部をcdc2キナーゼがin vitroでリン酸化できることを以前見出したが、今回、ブタ脳からこのH鎖特異的なキナーゼを精製することに成功した。精製標品は34Kと26Kの2つのサブユニットからなり、suclゲルに弱く結合し、34K蛋白質は抗PSSALRE抗体によって認識された。これらの結果は、終末分化した脳においてもcdc2関連キナーゼが機能していることを示している。
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