研究概要 |
原核生物レプリコンは大部分、単一の複製開始点(ori)でDNA-蛋白複合体(イニシオソーム)を構築し、複製を開始する。一方、真核生物のゲノムでは多くのoriクラスターから始まるが、その分子機構は全く分かっていない。そこで、本研究では、5.5kb内にoriα,β,γの3個の複製開始点をもつプラスミドR6Kをモデルレプリコンとして選び、マルティオリジンからの複製開始が如何に起こり、どのように制御されているかを明かにしたい。 本年度は、R6Kの3つのoriの活性化に必要なシス、トランスエレメントをさらに精査するために、π蛋白存在下で複製できる一個のみのoriをもったoriα,β,およびγプラスミドを構築し、その特性を解析し、次のような興味ある結果を得た。 1.oriγ活性におけるDnaA-box(I)配列は、π蛋白結合配列(7iterons)との距離が必要であった。なお、ゲルシフトアッセイにより、DnaA蛋白はこのDnaA-box(I)配列よりも、全てのori活性に必須のbox(II)により強い親和性をもつことが明らかになった。 2.oriβプラスミドの複製はπ蛋白をトランスに供給すると阻害され、本蛋白による複製制御が示された。 3.レプリコン活性はssiBを含むoriα領域と7iterons領域との間のスペーサー配列を必要とすることが明らかになった。特に、このスペーサーを欠失したプラスミドは、IHF蛋白によるDNA bendingがないと複製できないことより、π蛋白を介しての両領域間でDNA loopingがoriαの活性化に必須であることを示唆している。 今後、これらの成果を踏まえて、π蛋白やDnaA蛋白がiteronsやDnaA-boxesに結合後、3〜2kbも離れたoriαまたはoriβ領域とのDNA loopを形成してから、どのように各々のoriでイニシオソームを構築し、primer合成へと進行するかについて、in vivo,in vitro DNA複製系を用いて、解明していきたい。
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